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「氣」の世界 古代の知恵と現代科学の接点

「氣」の世界 古代の知恵と現代科学の接点

薬局で働く中で、西洋医学の薬だけでは説明できない患者さんの回復を何度も目にしてきました。「なぜか元気になった」「気持ちが楽になって症状が軽くなった」そんな声に触れるたび、東洋医学が数千年語り継いできた「気」という概念に興味を持つようになったのです。

目に見えないエネルギー。科学では証明しきれない何か。しかし最近の量子力学や生体電磁気学の進展により、この「氣」を科学の言葉で語れる可能性が見えてきました。

薬剤師として感じた西洋医学の限界と可能性

私は薬剤師として、日々患者さんと向き合っています。処方箋に基づいて薬を調剤し、服薬指導を行うことが主な仕事ですが、長年この職業に携わる中で、薬だけでは解決できない問題があることに気づきました。

例えば、同じ薬を服用しているのに、ある人には効果が現れ、別の人にはあまり効かないということがあります。また、プラセボ効果と呼ばれる現象、有効成分を含まない偽薬でも、患者さんが「効く」と信じることで実際に症状が改善するのも、医療現場ではよく知られています。

西洋医学は化学的・物理的な証拠に基づいた素晴らしい体系です。しかし、人間の身体と心はもっと複雑で、数式や化学式だけでは捉えきれない何かがあるのではないか。そう考えるようになったとき、東洋医学の「氣」という概念が、新たな視点を与えてくれました。

東洋医学が語る「氣」とは何か

東洋医学において「氣」は、生命活動を支える根本的なエネルギーとされています。中国医学では数千年前から、この「氣」が身体の中を経絡という道筋を通って流れていると考えられてきました。

「気」が滞ると病気になり、「氣」がスムーズに流れていると健康が保たれる——これが東洋医学の基本的な考え方です。鍼灸治療や漢方薬は、この「氣」の流れを整えることを目的としています。

私たちが日常的に使う言葉にも「氣」は深く浸透しています。「元氣」「氣力」「氣分」「氣気」など、無意識のうちに私たちは「氣」という概念を使って心身の状態を表現しているのです。

しかし西洋医学の枠組みでは、この「氣」を直接測定する方法がなく、長い間「非科学的」とされてきました。

波動という視点から見る生命現象

ところが近年、「波動」という概念を通じて、「氣」を科学的に理解しようとする試みが増えています。波動とは、振動が空間や物質を伝わっていく現象のことです。音も光も電磁波も、すべて波動の一種です。

人間の身体も、実は様々な波動を発しています。心臓の鼓動は電気信号として伝わり、脳波は神経細胞の電気活動によって生じます。これらは医療機器で測定可能な、明確な「波動」です。心電図や脳波計は、まさにこの波動を記録する装置といえます。

さらに最近の研究では、人間の身体全体が微弱な電磁場を発していることも分かってきました。この電磁場は、心拍や呼吸、筋肉の動きなどによって常に変動しています。もしかすると、東洋医学が「氣」と呼んできたものは、こうした生体電磁場や、それに伴う波動現象の一部なのかもしれません。

量子力学が示唆する新しい生命観

量子力学は、20世紀に発展した物理学の分野で、原子や電子といった極めて小さな世界の振る舞いを記述します。この量子の世界では、私たちの日常感覚では理解しにくい不思議な現象が起こります。

たとえば「量子もつれ」という現象があります。二つの粒子が一度相互作用すると、どんなに離れていても、一方の状態が瞬時にもう一方に影響を与えるというものです。アインシュタインはこれを「不気味な遠隔作用」と呼びましたが、実験で確認されている事実です。

また量子力学では、観測することそのものが対象の状態に影響を与えるという「観測問題」も知られています。つまり、観察者の意識が物質世界に何らかの影響を及ぼす可能性が示唆されているのです。

これらの量子力学的な現象が、人間の意識や生命現象にも関わっているのではないかという仮説があります。まだ確立された理論ではありませんが、「氣」や「波動」を考える上で、量子力学が新しい視点を提供してくれる可能性は大いにあります。

薬剤師の視点から見る統合医療の未来

私は薬剤師として、西洋医学の知識と技術を基盤にしながらも、東洋医学の知恵にも学ぶべきことが多いと感じています。ただし、ここで注意しなければならないのは、科学的根拠のない主張を安易に受け入れないということです。

「気」や「波動」について語るとき、どうしても曖昧な表現や、検証不可能な主張が混ざりがちです。しかし医療に携わる者として、私たちは常に謙虚でなければなりません。分かっていることと分かっていないことを明確に区別し、患者さんに正確な情報を提供する責任があります。

同時に、西洋医学だけに固執して、他の可能性を排除してしまうのももったいないことです。東洋医学が長い歴史の中で蓄積してきた経験知には、まだ科学的に解明されていない真実が含まれている可能性があります。

これからの医療は、西洋医学と東洋医学の長所を組み合わせた「統合医療」の方向に進んでいくのではないでしょうか。薬剤師である私も、化学的な薬の知識だけでなく、身体全体のバランスや、患者さんの心の状態にも目を向けることが大切だと考えています。

科学と伝統知の対話がもたらすもの

「気」を波動や量子力学の視点から解釈しようとする試みは、まだ始まったばかりです。確立された理論があるわけではありませんし、すべてが科学的に証明されているわけでもありません。

しかし、古代から伝わる知恵と最新の科学が対話を始めることには、大きな意味があると思います。それは、人間という存在をより深く理解するための、新しい道を開く可能性を秘めているからです。

私たち人間は、化学物質の集合体であると同時に、エネルギーの流れでもあり、意識を持つ存在でもあります。その複雑さを理解するには、一つの視点だけでは不十分なのかもしれません。

東洋医学が「気」と呼び、現代科学が「波動」や「電磁場」として測定しようとしているもの。量子力学が示唆する、意識と物質の不思議な関係。これらすべてが組み合わさったとき、私たちは人間の健康について、もっと豊かな理解に到達できるのではないでしょうか。

薬剤師として、これからも科学的な視点を大切にしながら、開かれた心で学び続けていきたいと思っています。患者さん一人ひとりの健康に寄り添うために、西洋医学と東洋医学、科学と伝統知、すべてから学ぶ姿勢を持ち続けたいです。

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